研究内容 |
ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を無血清培養条件下において効率的に生産するため、ハイブリドーマのモノクローナル抗体生産性を増強する抗体産生促進因子(IPSF)を検索・精製し、その作用機構の検討を行うことがこの研究の目的です。
抗体産生促進因子の精製は液体クロマトグラフィーと呼ばれる分離法方を用いて行います。また、精製された抗体産生促進因子の純度や、分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、確認されます。
また、抗体産生促進因子に蛍光物質を化学的に結合させ、その蛍光をもとに抗体産生促進因子がハイブリドーマの中へどのように取り込まれていくのかをレーザー共焦点顕微鏡を用いて観察します。
免疫調節活性の評価には動物細胞培養技術を用います。動物細胞(ハイブリドーマやヒト末梢血リンパ球)を培養している培地に試験物質を添加し、一定時間培養後、培養液中に分泌された抗体やサイトカインなどの免疫タンパク質の量を酵素抗体法(ELISA) によって定量します(下図参照)。酵素抗体法での測定時にマイクロプレートリーダーという、96個のサンプルの吸光度を一度に測定できる装置を用います。また、培養細胞に対する免疫タンパク質生産促進のメカニズムを解明するために、RT-PCRを用い、免疫タンパク質の転写レベルでの活性化の有無を確認します。このとき、サーマルサイクラーを用います。
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これまでに、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素、エノラーゼ、アルドラーゼ、アルコール脱水素酵素、リゾチームなどの酵素にハイブリドーマや末梢血リンパ球の抗体産生を促進する効果が認められています。また、ヒストン、ポリリジン、などの塩基性タンパク質にもハイブリドーマのモノクローナル抗体生産性を高める効果があることが知られています。さらに、最近注目を集めている米発酵エキスにもリンパ球による抗体産生を促進する効果があることが確認されました。
以下に、抗体産生促進因子についてこれまでに発表された論文を参考文献として挙げます。論文名をクリックすると論文の要旨を見ることができます。また、動物細胞培養を行ううえで参考となる図書を参考図書として紹介します。図書名をクリックすると、目次を見ることができます。参考にしてください。
参考文献 |
参考図書 |
●「新産業化学シリーズ ニューバイオインダストリー」 大日本図書, 1997年
●「動物細胞工学ハンドブック」 朝倉書店, 2000年