葉緑体とは

1.葉緑体の構造 2.葉緑体の機能 3.葉緑体の起源 4.葉緑体のその他の特徴 5.最後に

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1.葉緑体の構造

図1

 葉緑体は、外包膜と内包膜の二重の生体膜に囲まれている(図1)。外包膜と内包膜に囲まれた部分を膜間部と呼ぶ。葉緑体の内部は、 ストロマ空間で満たされており、さらに、別の膜構造であるチラコイド膜が存在する。チラコイドの内部は、内腔と呼ばれる。

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2.葉緑体の機能

 葉緑体は、チラコイドにおいて光合成を行うことによって光エネルギーを生体エネルギーに変換し、さらにそのエネルギー を利用して二酸化炭素から糖などの有機化合物を合成することが良く知られている。しかし、葉緑体は光合成の場であるばかり ではなく表1に示すように植物の生育にとって不可欠なアミノ酸や脂肪酸などの代謝産物、さらには二次代謝産物の合成の場で もある。したがって、葉緑体は、植物におけるミクロな化学工場ということができる。このことから、遺伝子工学的な手法を用 いながら、葉緑体の代謝を利用した物質生産に関する研究が広く世界で行われている。

表1 葉緑体内部における反応

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3.葉緑体の起源

 ミトコンドリアや葉緑体はこれらのオルガネラ自身のDNAを有していることから、原始的な真核細胞は元来酸素を利用すること のできない研寄生生物であったが、進化の過程で呼吸能を持つ好気性細菌や光合成能を持つ光合成細菌が共生した結果、現在のミト コンドリアと葉緑体ができたと考えられている(図2)。この説を細胞内共生説といい、1970年に出版された「真核細胞の起源」の なかでLynn Margulisが唱えた。現在では表2に示した多くの観察結果から、細胞内共生説は広く支持されている。
 

図2

図2 原始真核細胞に葉緑体が誕生した様子
(@)すでにミトコンドリアを共生によって獲得した真核細胞と葉緑体の源とされる光合成細菌。
(A)、(B)真核細胞と光合成細菌は、それぞれ補い合いながら生活するうちに光合成細菌が宿主である真核細胞に取り込まれ 始めた。
(C)光合成細菌は宿主細胞に最終的に完全にとりこまれた。
(D)その後、光合成細菌が独自に保持していたDNAの大部分は、宿主細胞の核内の染色体に移動した。
(E)その結果、現在の植物細胞の原型が出来上がった。

 これらのオルガネラが細胞内に取り込まれたことにより、それぞれのオルガネラは、宿主細胞由来の外膜と原核細胞由来の内 膜の二重膜構造を有することとなった。また、原オルガネラが有していた遺伝子の多くは宿主細胞の核に移動したが、それらの遺 伝子産物である蛋白質は、それぞれのオルガネラが機能を維持するためには依然として必要不可欠である。たとえば、「U.葉緑 体の機能」中の表1で示した葉緑体内部で行われる様々な反応に関与する蛋白質のほとんどは、現在、核内遺伝子にコードされて いる。遺伝子が核に移動した以上、ミトコンドリアや葉緑体の蛋白質は他の核内遺伝子にコードされている蛋白質と同様、核内で 遺伝子からmRNAに転写された後、細胞質で蛋白質に翻訳される。ただし、翻訳された蛋白質はそれぞれのオルガネラに間違えるこ となく到達する必要があるため、それらの蛋白質には、シグナル配列やトランジット配列と呼ばれるアミノ酸のストレッチからな るそれぞれのオルガネラに特有の暗号、「移行シグナル」を有することとなった。一方、それぞれのオルガネラの表面にも、移行 シグナルを認知する蛋白質(受容体)とオルガネラを囲む二重の生体膜という障壁を乗り越えるのに必要な蛋白質輸送装置が構築 された。ここで、注意しておいて欲しいのは、ミトコンドリアも葉緑体も同じ共生を源にするが、共生の時期は異なっている(ミ トコンドリアの方が先であると考えられる)ので、それぞれのオルガネラの移行シグナルの特徴は異なっており、受容体や蛋白質 輸送装置を構成する因子のどれ一つとして共通のものは見つかっていない。現在、世界では、それぞれのオルガネラに向かう蛋白 質の輸送の研究が熾烈に行われており、われわれは葉緑体への蛋白質輸送研究の一端を担っている。

 なお、葉緑体への蛋白質輸送に関する詳細、われわれが行っている研究内容についてはこちら( 研究の背景−概要研究テーマ概要)を参照してください。

表2 共生説を支持する観察結果

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4.葉緑体のその他の特徴

 ここまで葉緑体について述べてきたが、葉緑体は、実は、「色素体(プラスチド)」の一つの形態に過ぎない。色素体は植物の組織、 生育状況にあわせて分化・脱分化を行い、機能を変化させる。すなわち、葉では、光合成を行う葉緑体が、根では、エチオプラストが、 貯蔵組織ではデンプンを貯蔵するアミロプラストが、果実や、花弁、色づいた葉では、クロモプラストが、原色素体(プロプラスチド) から、分化し、さらにお互いの色素体同士で変換しあうと考えられている。蛋白質輸送という観点からすれば、プロプラスチドから葉緑体に 分化する際には、大量の蛋白質の葉緑体への輸送がおこる。一方、それぞれの色素体も必要な蛋白質は、細胞質より取り込む必要がある。 蛋白質輸送に必要な因子のいくつかは、色素体に共通している一方で、受容体に関しては、光合成に関与する蛋白質とそうでない蛋白質 の違いによってアミノ酸配列上は似ている蛋白質であっても異なる受容体を利用するという研究結果が現在他のグループの研究により 得られている。

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5.最後に

 葉緑体については、これまで長い間多くの研究者たちが光合成に関する研究を行ってきたが、光合成を離れてみても、上述したように数 多くの興味深い現象をもつオルガネラだといえる。様々な合成反応においては、合成経路に関与する無数の酵素がこれまでに同定されている。 食の信頼が薄れている今日この頃、一方では相変わらず健康ブームが衰えることを知らない。現況においては、いかに安価に、安全にサプリメ ントを供給できるのかが鍵になる。原材料としての植物は、その条件を満たすことが可能である。現在、多くのサプリメントは微生物の醗酵によ って合成されているが、葉緑体では、もともとサプリメントの原料になる代謝産物を数多く合成している。すなわち、葉緑体の機能を少し変え るだけで、特定の栄養素の含量を大きくした植物体を手にすることのできる可能性を秘めている。われわれの研究は、今日明日にも研究結果を 実地に生かせるものではないが、将来、葉緑体を用いた応用面での研究に何らかの貢献ができればと考えている。

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