マイ・ラブリー・ガーデン
五月のよく晴れた、ある朝、顔を洗ったあと、親の家の十坪ほどの前栽に一人うずくまって周囲を見わたす。不審なものとでも思っているのであろうか、時折、隣家の犬がワンワンとほえる。
生け垣として高さ一・五メートルほどのベニカナメモチが植わっている。新芽が勢いよく吹き出し、葉ぶりはいいがもう一つ「ベニ」色のあざやかさがない。もえるようなベニ色ではなくて、赤みがかった茶色をしている。五十センチぐらいおきに庭の周囲に数十本植わっているが、これらはここに(兵庫県三田市)移ってきたときに、四年前に両親と一緒に近くの植木位置で買ったものだ。手入れが行き届いているためか、幹もずいぶん太くなり枝葉も張って立派な生け垣となった。
前栽を見わたして比較的背が高い木といえば、三メートルぐらいのアメリカハナミズキの白とピンクの木が二本、こんもりと丸く刈られた二メートルぐらいのキンモクセイ、なぜだか知らないが、葉がヤツデのように大きくなった三メートルぐらいのカエデの木、カエデの両側に、一・五メートルぐらいのピラカンサとヒイラギが植わってある。
アメリカハナミズキの白花の方は真っ白な色が鮮やかで、四枚の花弁が勢いよく精いっぱい開いている。それに対してピンクの方は花びらにあざやかさがない。澄んだピンクではなく、くすんだ黒っぽい桃色をしている。花のさきっぷりも元気がない。このハナミズキは植木・園芸で著名な大阪池田のA農協の定期競り市で十分に品定めして買ったものだが、そのときはピンクの木もあざやかな花をつけていた。ピンクの方はここの土になじみ切れないのかもしれない。
七十センチほどのジンチョウゲ、今は花を落としている。これは以前の家の前栽に植わっていたものだが、中学、高校、大学、大学院時代を過ごした前の家は今はどうなっているのかな。五十センチぐらいのピンクのツツジが二本、赤のツツジが二本。赤の方はかなり花が咲いているが、ピンクの方はまだつぼみのままである。ハナミズキの根元のところで二本のアヤメが紫色の上品な花をつけている。そばにいってアヤメの花のにおいをかぐと甘い香りがする。ツツジの花は何の匂いもしない。ジャーマンアイリスがカエデの周囲に数十本植えられている。つぼみはまだついてないが、六月半ばには紫と黄色の花が咲くだろう。―アイリスよ、毎夏元気に咲いててよ―アイリスのそばで、十センチぐらいの背丈のエビネがかわいい白い花をつけている。―花の園ラブリー平和でいつまでも―母が家から出てきて「隆雄ちゃん、何してるの」。
(細川隆雄・愛媛大助教授)