【基盤研究(S)】 平成24年度−28年度 |
||||
|
生物系(農学) |
|||
|
||||
|
||||
|
研究課題名 |
オンサイト・リアルタイム細胞分子計測による |
||
|
|
|||
研究分野: |
農業工学 |
|||
キーワード: |
細胞・組織、 植物、 質量分析 |
|||
【研究の背景・目的】
平成23 年3 月末に、植物工場の国内研究拠点として、愛媛大学農学部に植物工場が完成し、トマト栽培が行われ始めた。東日本大震災に代表される大災害からの復興、異常気象からの食料不足、野菜不足の回避が求められ、食の安定供給、食の安全の観点から、日本学術会議からの提言で、植物工場の実用化の必要性が示されており、緊急の課題として平成20年度−平成24年度実施中の基盤研究(S)研究課題の最終年度前年度の応募をするに至った。
本研究は、植物工場においてプレッシャープローブで採集した細胞溶液を探針エレクトロスプレーにより、直接、現場で質量分析を行うシステムを開発し、植物生理情報を制御要素として農業環境制御を行うスピーキング・セル・アプローチ(Speaking Cell Approach)(SCA)法を創成することを目的としている。栽培作物のリアルタイム質量分析を実行し、環境要素変化に伴う代謝変化を植物生理学(理学的)・栽培生理学(農学的)に基づき解明して、省エネを考慮したSCA を確立することによって、食料生産の効率を格段に増大させ、日本が迎えつつある食料危機の回避、食の安全性の確保により、国民を守ることを目指す。
【研究の方法】
前処理なしでのサンプルの直接質量分析はこれまで行われておらず、探針エレクトロスプレー(PESI:Probe Electrospray
Ionization)は混合物でのイオン化を可能にする。
植物細胞膨圧を計測しながら、細胞壁にナノメートルオーダーの探針を突き刺し、細胞壁の成分を取り出すことができると、細胞壁の中に分子が組み込まれる状態が解明でき、植物の生理情報を作物をほとんど破壊することなく検出することが可能となるはずである。
したがって、プレッシャープローブを用いての細胞膨圧、浸透圧、水ポテンシャル、細胞壁弾性率、水の細胞膜透過率、細胞体積などの物理的計測と、探針を用いてのナノメートルオーダーの細胞操作による化学分析を組み合わせることで、細胞分子情報を獲得し、SCA法によりエネルギー効率の高く、高品質の農産物を生産することができる新世代の植物工場を創成することを目的としている。
【期待される成果と意義】
植物生理情報の獲得を非破壊状態で行うことが可能になると、生理情報をフィードバックしながら、作物の栽培環境を制御することが植物工場で可能になる。作物が育つ上で転流が正常に行われる生理条件は作物が環境に順化しているかどうかで異なってくる。また、果実の肥大、糖集積も細胞内での浸透圧調節機能が働いているか、に依存する。栽培条件下で分子情報を直接獲得する手法の基礎技術と本研究は位置づけることができ、本研究の応用により植物工場での栽培の自動化、および省エネルギー化が達成する手法を確立することが期待できる。
【当該研究課題と関連の深い論文・著書】
・野並浩 2001.植物水分生理学. 養賢堂 pp.263
・Yu, Z., Chen, L.C.,
Erra-Balsells, R., Nonami, H., Hiraoka, K.
(2010) Real-time reaction monitoring by probe electrospray ionization mass
spectrometry. Rapid Communications in Mass Spectrometry 24 (11), pp. 1507-1513.
・Yu, Z., Chen, L.C.,
Suzuki, H., Ariyada, O., Erra-Balsells, R., Nonami,
H., Hiraoka, K. (2009) Direct profiling of phytochemicals in tulip tissues
and in vivo monitoring of the change of carbohydrate content in tulip bulbs by probe
electrospray ionization mass spectrometry. Journal of the American Society for
Mass Spectrometry 20 (12), pp. 2304-2311.
・Yousef Gholipour, Hiroshi Nonami, and Rosa Erra-Balsells (2008)
Application of pressure probe and UV-MALDI-TOF MS for direct analysis of plant underivatized
carbohydrates in subpicoliter single-cell cytoplasm extract. Journal of the
American Society for Mass Spectrometry 19: 1841?1848.
【研究期間と研究経費】
平成24年度−28年度
152,600千円
【ホームページ等】
http://web.agr.ehime-u.ac.jp/~pbb/
http://www.agr.ehime-u.ac.jp/laboratory/shisetsu_03.php
nonami@agr.ehime-u.ac.jp