基盤研究(S)平成20年度〜平成24年度
細胞膨圧計測−探針エレクトロスプレーによる細胞分子情報計測
研究代表者
愛媛大学農学部教授 野並 浩
総括およびプレッシャープローブの改良と細胞分子情報計測
(分子計測および装置の実用化を中心に担当)
研究分担者
山梨大学クリーンエネルギー研究センター 特任教授 平岡 賢三
ピコスプレー質量分析用の探針エレクトロスプレーの開発
(装置の設計・組立・改良を中心に担当)
研究協力者
ブエノスアイレス大学・基礎自然学部(大学間学術交流協定・学部間学術交流協定締結校)教授
ERRA-BALSELLS, Rosa
植物細胞代謝物質の質量分析イオン化手法の開発と分子構造解析
【研究の概要等】
本研究は、プレッシャープローブで採集した細胞溶液を探針エレクトロスプレーにより直接質量分析するシステムを開発し、植物工場において植物生理情報を制御要素として農業環境制御を行うスピーキング・プラント・アプローチ(Speaking
Plant Approach)(SPA)法と直結するナノ・プレシジョン・アグリカルチャー(Nano-Precision
Agriculture)(ナノ精度農業)を創成することを目的としている。
前処理なしでのサンプルの直接質量分析はこれまで行われておらず、探針エレクトロスプレー(PESI:Probe
Electrospray Ionization)は混合物でのイオン化を可能にする。
植物細胞膨圧を計測しながら、細胞壁にナノメートルオーダーの探針を突き刺し、細胞壁の成分を取り出すことができると、細胞壁の中に分子が組み込まれる状態が解明でき、植物の生理情報を作物をほとんど破壊することなく検出することが可能となるはずである。
したがって、細胞膨圧、浸透圧、水ポテンシャルなどの物理的計測と、ナノメートルオーダーの細胞操作による化学分析を組み合わせることで、細胞分子情報を獲得し、SPA法によりエネルギー効率の高く、高品質の農産物を生産することができる新世代の植物工場を創成することを目的としている。
【当該研究から期待される成果】
植物生理情報の獲得を非破壊状態で行うことが可能になると、生理情報をフィードバックしながら、作物の栽培環境を制御することが植物工場で可能になる。作物が育つ上で転流が正常に行われる生理条件は作物が環境に順化しているかどうかで異なってくる。また、果実の肥大、糖集積も細胞内での浸透圧調節機能が働いているか、に依存する。栽培条件下で分子情報を直接獲得する手法の基礎技術と本研究は位置づけることができ、本研究の応用により植物工場での栽培の自動化、および省エネルギー化が達成する手法を確立することが期待できる。
【当該研究課題と関連の深い論文・著書】
・野並浩 2001.植物水分生理学. 養賢堂 pp.263