石炭灰を人工ゼオライトに転換して
地球環境保全型の農業資材として高度リサイクル
1 はじめに
ご存じのように、電力の使用量は毎年確実に増え続けています。こうしたなか、石炭を使う火力発電所が各地に新しく建てられています。石炭が、近くやって来る石油不足時代の有力な代替エネルギー資源であるからです。このような火力発電所からは、石炭を燃やした後の灰が廃棄物として出てきます。「石炭灰」と呼ばれるこの廃棄物です。我が国では、発電所からだけで年間約400万トンにものぼる石炭灰が出ています。これから、石炭火力発電所の数は増えますので、排出量はますます増えると予想されています1)。石炭灰は、製鉄所などからも、一年に約140万トンも放出されています。世界的な規模での石炭灰排出量は年間合計で4億トンと、膨大な量にのぼります。
この石炭灰は、現在、セメント原料のなどに一部が利用されているだけです。半分以上は、単なる廃棄物として、埋め立て地などに捨てるしか処理方法がありません。最近では、捨て場を見つけるのがたいへん難しくなってきています。写真ー1のように火力発電所の敷地内に捨てなければならない場合も多々でています。
(写真−1)写真をクリックすると拡大します。
敷地もだんだん手狭になっています。いま、石炭灰が、国内外に、大きな廃棄物問題を引き起こしています。こうした状況のもとで、平成3年に、「再生資源の利用の促進に関する法律」が制定されました。同法の目的は、限りある資源の有効利用を図るとともに、廃棄物の発生を抑えて環境の保全を促進するということにあります。この灰は、同法律において、「指定副産物」に定められました。指定副産物というのは、再生資源を有効に利用する上で、特に重要な廃棄物のことです。石炭灰は、その処理問題の緩和と再利用の促進のために、新たな再資源化技術の開発が必要な時期を迎えているわけです。このような背景を踏まえて、私たちの研究グループでは、石炭灰を、新しい方法で有効利用する技術を探ってきました。そして、この灰を、人工的にゼオライトに変える化学反応を見つけました2、3、4、5、6、7、8)。ゼオライトの持ついろいろな有用機能を活用することで、様々な分野で利用する道が開けてきました。ここでは、ゼオライトに転換することで石炭灰を、主に環境保全型農業資材としてリサイクルする技術的方法について述べます。
2 石炭灰の人工的なゼオライトへの転換
石炭には炭素の他少量の無機成分が入っています。この成分は不燃物質なので、石炭が燃えた後に灰として残ります。石炭灰の主な成分はケイ素及びアルミニウムです。炭種の相違で多少違いますが、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)として、それぞれ、40−65%および25−40%ぐらい含まれています。両成分は、SiO2やAl2O3などの酸化物の化学形態で存在するのではありませんが、ふつう酸化物に換算して量的な表示を行います。わずかな量ですが、酸化鉄、アルカリ金属、アルカリ土類金属なども入っています。石炭灰の例を写真−2に示します。
(写真−2)写真をクリックすると拡大します。
これらの成分は石炭を燃焼した時の高熱で熔けてしまいます。灰になる過程で急に冷えるため、ほとんどがガラス質の状態になっています。従って石炭灰は、化学的には、不純物を含む非晶質ケイ酸アルミニウムであといえます。X線回折を測定すると、石英やムライトなどの結晶性物質が少量含まれていますが、大部分は非晶質であることがわかります。ケイ素及びアルミニウム成分は単に混合して含まれるのではありません。赤外吸収スペクトルを見ると、Si−O−Alの結合を形成しており、ケイ酸アルミニウム構造を持つことがわかります。こうした知見から、石炭灰は、土壌中の非晶質ケイ酸アルミニウムとしてよく知られているアロフェンと似ていることがわかります9)。赤外吸収スペクトル測定や熱分析から、石炭灰は構造OHをほとんど含んでおらず、無水物であることがわかります。アロフェンが非晶質含水ケイ酸アルミニウムであるのに対して9、10)、石炭灰は非晶質無水ケイ酸アルミニウムです。アロフェンは、アルカリと反応すると、結晶化し、ゼオライトに変化することが知られていました。非晶質ケイ酸アルミニウムの石炭灰も、無水物であっても、同様の処理でゼオライトに結晶化することは予測できます。写真ー3に結晶質と非結晶質についての概念図を示します。
(写真−3)写真をクリックすると拡大します。
石炭灰のアルカリ処理を次のようにして試みました。石炭灰を三角フラスコに取り、アルカリとして水酸化ナトリウム水溶液を加えて、スラリー得ます。このフラスコに還流冷却管を取り付け、ホットプレート上でスラリーを約95℃にて、写真ー4のようにして加熱処理しました。
(写真−4)写真をクリックすると拡大します。
処理物を、X線回折法、赤外吸収スペクトル法、熱分析法などで分析すると、フィリップサイトが生じていることがわかりました。フィリップサイトは、カイジュウジ石とも呼ばれ、ゼオライトの一種です。アルカリ処理物を電子顕微鏡で観察すると、写真ー5のように石炭灰の球状粒子の表面にフィリップサイトの結晶性が生成していることがわかる。
(写真−5)写真をクリックすると拡大します。
一般的に、ゼオライトとは、フッセキ類に分類される鉱物です。化学的には、3次元網目状構造をもつテクトアルミノケイ酸塩です。その化学構造は、2つの種類の四面体が4つの頂点を共有するように連結した形に組み立てられています。一つは、ケイ素(Si)とその回りに存在する4個の酸素(O)がsp3混成軌道を形成することによって結合したSi四面体です。もう一つは、Si四面体のSiに代わってアルムニウム(Al)が置換したAl四面体(4配位Al)です。化学組成の一般式は,XmYnO2n・SH2O(X=Na,K,Ca,まれにBa,Sr,Y=Si+Al(Si/Al>1),S=不定)となっています。連続した微細な孔路からなる多孔質の構造中に、加熱や脱気により容易に脱水さる弱く保持された水(フッセキ水)とを含むことが特徴です。
ゼオライトは、18世紀にスエーデンの鉱物学者クロンステットによって、アイスランドの玄武岩中の空洞に晶出した鉱物として初めて記載されました。初期時代に岩石や鉱物分析に用いられた吹管で加熱すると、膨れて、結晶水があぶくや水蒸気となって放出されます。ちょうど沸き上がっているように見えることから、沸騰する石という意味のギリシャ語からゼオライト(zeolite:沸石、zeo=boil;lite=stone)と名付けられました。今では、約40種類以上にのぼる天然ゼオライトが発見されています。合成物までも含めるとさらに多くの種類が知られています。結晶水が出て行った後の細かい間隙や孔路は、分子オーダーのサイズです。分子をふるい分ける作用、つまり分子篩作用を示すので、「モレキュラーシーブ」という名称も与えられています。間隙や孔路に、アンモニア、水素、二酸化炭素などをはじめ各種の分子を吸着できます。天然ゼオライトの脱水、吸着、イオン交換など諸機能が物理化学的に研究されて始めて以来、ゼオライトを人工的に合成する試みも行われてきました。Linde A型と名付けられたゼオライトが、一番始めの合成ゼオライトです。これは、空気から窒素と酸素を分離する能力が、天然ゼオライトのチャバサイトより勝っています。。ゼオライトは、固有の細孔径、表面電荷、イオン交換能、吸着能、分離能、固体酸性など有用な諸特性を活用できるから、広い用途に応用できます。石炭灰をアルカリ処理して得たゼオライトの吸着効果を写真ー6に示します。
(写真−6)写真をクリックすると拡大します。
なお、同様のアルカリ処理で、石炭灰から、フィリップサイトだけでなく、ホージャサイト、ヒドロキシソーダライト、ゼオライトAなどもしばしば生じます。石炭灰を500〜700℃に予め加熱して処理すると、アナルサイム(アナルサイト)が生じることもあります。アルカリに、水酸化ナトリウムではなく水酸化カリウムを用い、長時間反応させると、チャバサイトができることもあります11)。また、石炭灰と似た化学組成の製紙スラッジ焼却灰、活性汚泥焼却灰、都市ゴミ焼却灰なども上述の処理でゼオライトに転換できることも明らかにしています12)。
3 ゼオライトに転換した石炭灰(人工ゼオライト)の環境保全型
農業資材への高度有効利用
ゼオライト化した石炭灰、とくにフィリップサイトに転換したものは、「人工ゼオライト」という名称で呼んでいます。従来の合成ゼオライトおよび天然ゼオライトと区別するための名前です。すでに、工業規模で人工ゼオライトを製造する写真ー7のような大型プラントが3)が完成しています。
(写真−7)写真をクリックすると拡大します。
このプラントで、比較的高性能のゼオライト資材をリサイクル品として安価に提供できるようになりました。プラントで製造した人工ゼオライトの写真ー8のような各種造粒品を示します。
(写真−8)写真をクリックすると拡大します。
ここでは、吸着、イオン交換など有用機能を活用して、環境保全型農業資材として利用する方法を中心に述べます。
植物生育を増進し、かつ農地からの肥料流出による環境汚染を少なくする土壌改良資材として有効利用する方法についてです。人工ゼオライトの芝生育に及ぼす効果を検討してみました15)。砂質土壌は、多くはやせた土であり、肥料を施用すると流れ出して地下水、河川水、湖沼水など水圏環境を汚すことがよく起こります。そこで、この種の土壌を改良する資材に利用することを目指します。供試土壌として花崗岩風化土壌(マサ土)を用意しました。この土壌40kgをポットに詰め、人工ゼオライト転換した石炭灰(CEC 362cmol(+)・Kg-1)を10、40または100g添加して、表層約5cmまでに混入しました。それぞれ少量区、中量区、多量区としました。対照として、無添加のものを、無処理区としました。この添加によって、土壌全体に対するCECの増加は、少量区で2.2%、中量区で8.8%、多量区です。処理区および無処理区のポットにヒメ高麗芝を移植し生育しました。芝生育試験の結果を写真ー9に示します。
(写真−9)写真をクリックすると拡大します。
無処理区における草丈の平均値と標準偏差は、それぞれ、5.05cmおよび±0.57cmでした。これに対して、処理区では、少量区、中量区、多量区の順に草丈の平均値が高いことがわかりました。多量区における草丈の平均値は、無処理区のそれに比べ2倍以上にも達しました。乾物重も、無処理区でわずかに95.89gであったものが、少量区、中量区、多量区と後の区ほど増加していました。多量区では212.36gにも達していました。データを一元配置分散分析にて統計処理したところ、各区の間には有意の差が認められました(P>0.005)。芝の生育が良好になるのは、人工ゼオライトを添加することで土壌のCECが増大し、その結果、肥料の流亡が抑制されることが理由の一つであると考えられます。ガラス管カラムに同じ土壌をつめ、人工ゼオライト転換した石炭灰をポットとほぼ同じ割合で加えて、肥料(K+、NH4+、Ca2+,Mg2+)の溶脱実験を行いました。その結果、少量区に相当する添加量ではわずかな流出が認められたが、中量区と多量区に相当する添加量ではほとんど溶脱しいことがわかりました。芝生土壌は、ゴルフ場、野球場、フットボール競技場、などスポーツ競技場としてしばしば利用されています。降雨やかんがいの後、速やかに排水でき、水溜りなどできないような土壌が要求されます。このため、透水性の良好な砂質の土壌が使われることになります。砂質土壌は、粘土コロイド成分が少ないため、植物養分、肥料などの保持力は一般的に弱くなってきます。上からの浸透水により、養分、肥料は容易に流亡してしまいます。透水性を良く保ったまま保肥能力を高めるのに必要な土壌改良資材として、人工ゼオライト転換した石炭灰は適していることがわかりました。農地からの肥料の流出が抑制できれば、肥料経費を節減できます。さらに、栄養塩(肥料)の流入による湖沼、海洋など水圏の富栄養化も軽減できので、環境保全型農業の資材への有効利用も期待できることになります。
人工ゼオライトの土壌改良効果による生育促進は、芝だけでなく二十日大根のような作物に対しても写真ー10のように認められます。
(写真−10)写真をクリックすると拡大します。
砂地で栽培するサツマイモに対しても写真ー11のように効果が現れます。
(写真−11)写真をクリックすると拡大します。
(写真−12)写真をクリックすると拡大します。
最近、コンクリート(とくにポーラスコンクリート)に人工ゼオライトを混入することで、魚礁、河川護岸ブロックなどコンクリート製品に、高い生物親和性を写真ー13のように付与できます。
(写真−13)写真をクリックすると拡大します。
多自然型工法に不可欠な生態系コンクリート(エココンクリート)への、人工ゼオライトの有効利用の道も開きつつあります。この有効利用は原理的には、土壌改良に利用する方法と同じなのです。
人工ゼオライトは、塩類濃度障害や微量要素過剰症に陥った植物を回復させる働きがあります。次にこの働きについて述べます。施設栽培は、ガラスやビニールで覆っており降雨に洗われる機会が少ないため、施用した肥料に起因する各種塩類が集積しやすい環境にあります。しばしば高塩類土壌が生成して、作物の生育とって不都合な事態が多く起こります。塩類濃度が高くなると、土壌溶液の浸透圧は上昇し、植物は水分吸収が抑制され異常となります。この異常は、葉色が濃くなったり、茎が細くなったり、果実の肥大が抑えられたりして現れてきます。異常の程度が大きくなると、葉は枯死し、成長は止まってしまいます。トマトなどの果実には尻腐れ症状が現れることがあります。また、長年の多肥によって、微量要素の集積している場合も数多く見られます。銅、亜鉛などの微量要素が、異常葉中に、適量値の8〜50倍も含まれている例もあり、重金属類の過剰障害が生じていることもあります。ハウス栽培で現れたキュウリの重金属過剰症による異常葉を写真ー14にを示します。
(写真−14)写真をクリックすると拡大します。
このような塩類集積や微量要素過剰は、作物の生産性の低下、品質の劣悪化を招きます。さらに、重金属類を高濃度に含む作物を食品として長期にわたって摂取すると、健康上の問題がでてくる可能性もあります。このような問題点を解決するため、人工ゼオライトの利用を試みます。先に述べた方法によって、水酸化ナトリウムで石炭灰を人工ゼオライトに転換処理した後、カルシウム型ゼオライトにして土壌に施用してみました。施用土壌は、沖積水田土壌を、数年から10年くらい前に、ビニールハウスの施設栽培用に変えて、キュウリを連作してきた土壌です。微量要素入化成肥料を多施肥していたため、2〜年前より、キュウリは葉が葉脈に沿って黄変・褐色化するものが頻繁に現れるようになり、収量の大幅な低下を招いていました。土壌の導電率(EC)が2〜3mS/cmもあり、塩類集積による濃度障害も原因になっていると考えられます。この施設栽培の土壌に、上のようにして人工ゼオライトを300〜500g/平方メーターほど施用し、水を十分に与え約1週間ほど放置しました。施用した土壌で生育したキュウリは、障害を受けた葉の下に、ほぼ正常な新葉が生じ、新たな発根も観察されて、塩類濃度障害および微量要素過剰症が写真ー15のように軽減・回復してきました。
(写真−15)写真をクリックすると拡大します。
これに対し、本資材を施用しなかった土壌では、依然として障害がでたままでした。人工ゼオライトは、塩類濃度障害および微量要素過剰症を除き、キュウリを回復させる効果を持っていることがわります。土壌中の過剰微量要素に由来する重金属イオン類を人工ゼオライトが強く吸着し余分な微量要素を不可給態化したため、回復してきたのです。
次に、トマト尻腐れ病の防止に有効性を示す試験結果を示します。これまで、トマトの尻腐れ病は、土壌など培地にカルシウムが不足することから起こる、カルシウム欠乏症とされていました。しかし、施設栽培などで頻発するこの病気は、最近、銅、亜鉛イオンなどの微量要素を過剰に吸収することで誘因されるカルシウムの欠乏症(たとえ、十分量のカルシウムを施用しても)でもあることが、私たちのグループの研究でわかってきました。茎や、果実の付け根のガクの部分までには、カルシウムが十分に吸収されているにもかかわらず、果実中には、カルシウム含量が極度に低くなっていることが見つかりました。これは、ガク部とトマト果実の間の細胞あるいは細胞膜が、銅、亜鉛イオン等の重金属によってカルシウムを透過させにくくなるような、なんらかの機能障害を受けたものと考えられます。重金属による、細胞中のCa体内移動に係わる酵素(ATPaseなど)の機能異常あるいは、細胞膜の構造的・化学的変化が原因であろうと考えていますが、詳細なメカニズムは、まだ不明のままになっています。銅、亜鉛を過剰量添加して栽培すると、写真ー16のようにトマトに尻腐れ病が発生しました。
(写真−16)写真をクリックすると拡大します。
人工ゼオライトを施用しますと、過剰量の銅、亜鉛が含まれていても、写真ー17のように正常に生育できることが明らかになりました。
(写真−17)写真をクリックすると拡大します。
尻腐れ病を防ぐのは、人工ゼオライトが、これらの重金属を吸着し、トマトが吸収するのを阻害したためと考えられます。事実、銅と亜鉛の吸着実験を行なうと、写真ー18の図に示した吸着等温線のように、人工ゼオライトはこれらの重金属をよく吸着することがわかります。
(写真−18)写真をクリックすると拡大します。
吸着された重金属は流出しにくくなるので、農地による周りの生存環境への重金属汚染もくい止めることが可能となります。ガラス室栽培やビニールハウス栽培などの施設栽培において、キュウリ、ナスなどの野菜作物に頻発する塩類濃度障害や微量要素過剰症を、軽減および解毒・回復させる資材として、人工ゼオライトが利用できることが明らかになりました。この資材によりイオン保持能、吸着能、団粒構造など土の理化学的および理工学的特性を改善することで、集積塩類の溶脱を促進するとともに過剰微量要素に由来する有害重金属類を吸着・無毒化して、品質の高い作物を高生産できる生育環境を作り出すことができます。
4 人工ゼオライトの一般的な有効利用
人工ゼオライトは、石炭灰から得たリサイクル資材です。ゼオライトとしての有用特性である吸着性、イオン交換性、触媒性などの機能を持っています。これらの特性を単独あるいは一緒にして活用することで、以下に示した各種用途に有効利用できます17)。用途は、環境改善、生物利用工業・バイオテクノロジー、農畜水産、土木・建築、都市環境整備・都市計画、公衆衛生、新素材など様々な分野にわたります。
I.吸着能を活用した有効利用
a)除臭・吸湿・調湿・放湿
家畜排泄物や活性汚泥の脱臭および乾燥促進。畜舎、鶏舎、貯蔵庫
の除臭。屋内冷
暗所(床下、押し入れ等)の悪臭除去や除湿。ペット類の排泄物の乾燥と脱臭。吸着
式ヒートポンプ用吸着材。床下調湿
材。消火用粉剤。
b)鮮度保持
青果物等から発生するエチレン、アルコール、アルデヒドなどのガス成分を吸着することにより、
流通、貯蔵
時における過熟の抑制と品質劣化の防止。
c)種子類の安定保存
保存中の乾燥、および発生するガス成分を吸着し、種子の品質や発芽性の劣化を防止。
d)展着・増量
肥料や農薬に添加して、肥効や薬効の持続化と強化を図ると共に希釈剤として用いる。
悪臭性肥料や農薬の除臭も同時に行える。
硫安、塩安などアンモニウム態窒素を含む肥料の硝酸化成抑制。
e)有毒ガスの吸着
H2Sなどの吸着により、作物の根ぐされや腐敗の防止。
ビニールハウスなどの中に発生する有害なSO2やNO2ガスを吸着除去することで、
作物に対するガス障害の防止と同時に、農作業者への人的被害を防ぎ健康を守る。
f)飼料への添加
腸内有毒物の吸着による飼料効率の増大、胃腸病の減少。
経口消臭による家畜糞の悪臭を減少。家畜軟便の硬化・固化。
g)廃油処理
農業機械廃油、廃食用油、工業用廃油などや、
タール、タンカー事故などによる流出石油・原油などの吸着硬化処理。
自動車事故などで道路にまき散らされた油の除去。
h)連作障害の回避
いや地の原因物質(ポリフェノール類、シアン化合物、青酸配糖体など)を
吸着分解除去、病害微生物の生育抑制などによる連作障害の防止。
i)微生物の凝集
糸状菌、バクテリア、放線菌、酵母、ビールスなどの吸着、凝集剤。
j)吸着分離
微生物生産物の吸着分離。微生物、細胞、組織培養での老廃物の吸着による培養環境
の改善・良好化。
k)アスファルト改質剤
アスファルトに混合することで、含まれる軽質油分を吸着し、夏期などの高温軟化を
防止する。
l)脱色剤、染料吸着担体
染色工場の廃水処理。水溶性染料を吸着させ着色粉末材を製造、この粉末を建材や塗料に利用。
m)抗菌剤
Ag、Cu,Zn、Hgイオンなどで飽和して抗菌作用を付与する。
有機系防カビ・防菌剤の耐熱性化。木材の地中埋没部への塗布などによる腐朽防止。
船底、橋などの海洋構築物、漁網などに付着するプランクトンやフジツボなどの生物を発育阻止。
建築用の壁材の抗カビ抗菌性化。コンクリート製土管の硫酸菌発生抑制による腐食防止。
n)多機能性コンクリート
結露防止性コンクリート。白華防止性コンクリート。高断熱性コンクリート。
近自然型工法用の生物親和性コンクリート(生態系コンクリート、エココンクリート)。
河川
水浄化護岸コンクリート。魚礁・藻礁コンクリート。
O)PSA(プレッシャー・スイング吸着)分離
空気から窒素と酸素の分離など。
II.陽イオン交換能を活用した有効利用
a)土壌改良
砂丘地、花崗岩風化土、砂粒質火山灰土などにおける養分保持能の強化・改善。
畑地
や水田への混入、芝地(ゴルフ場のグリーン、競技場など)や
草地への散布とか客入などにより、これらの土壌から肥料や農薬が流亡するのを防ぐ。
この流亡防止は生産費を節約するだけでなく、肥料・農薬による水質汚染も食い止める。
酸性雨などで酸性化した土壌の改善。都市緑化。高速道路、市街地、住宅地など狭い場所の緑化。
道路のり面の酸性化防止と有害アルミニウムの吸着除去。砂漠緑化。マングローブ林の k改良。
b)土壌解毒
土壌中の過剰養分や残留農薬等有害物の吸着。特に施設栽培(ガラス温室、ビニールハ
ウス栽培)や園芸作物栽培における過剰肥料障害の防止、微量要素過剰症の回復。
土中残留農薬や重金属類の固定による移動防止および作物による吸収防止。
干拓地土壌の塩障害の軽減。台風による高潮などで海水が流入した田畑、果樹園等の塩害軽減。
c)水耕栽培用安定培地
養液栽培における培養液に添加し高い緩衝能を付与することで、pHや養分組成の変
動の少ない安定培養環境を作る。コンピュータレスの低コスト植物工場への利用。
根から放出される有機酸等の有毒老廃物の吸着除去による栽培環境の改善。
ロックウ
ール栽培培地の改善。
d)人工土壌・人工培地
家庭園芸用プランターなどの人工土壌。育苗用培地。
植物組織培養、カルス培養などの培地。微生物培養培地の改善資材。
e)水質浄化
養魚池、飼育水槽などの残飼料や魚の排泄物の腐敗により発生する有毒なNH+4の除去など。
錦鯉の発色改善。農業用水の浄化。ボイラーなどの用水の軟化。
酸性雨などで酸性化した河川や湖沼水の無公害的(水圏生態を壊さない)な中和処理剤。
f)水処理・汚水処理
畜舎洗浄排液の浄化。ダム湖や水処理施設、特に近年需要の著しい農村集落排水施設
などにおけるNH4+、リン、有害重金属イオンなどの除去。
農地からの過剰肥料や農薬の流出を防止することで、水質汚濁や赤潮発生などを防ぐ。
90Srや137Csなどを含む放射性廃水処理。廃水の三次処理・高度処理資材。
III.その他の機能(触媒能など)を活用した有効利用
a)高い触媒活性に着目して、内燃機関の排気ガス浄化。
ボイラーや自動車の排気ガス中の窒素酸化物分解用の安価な触媒。
フロンガス、炭酸ガスなどの分解除去剤。焼却炉排煙中のダイオキシン除去。
PCB、DDT、BHCなど各種の有害有機塩素系化合物の分解除去。
底質覆土によるヘドロ中の有機水銀の吸着固定。堆肥の熟成促進と高品質化剤。
廃プラスチックの油化・ガソリン化。石炭液化用の低廉触媒。
焼却時に有害ガス発生の少ないプラスチック製品。
b)暗色性を利用して、田畑の融雪促進。
積雪融解剤として使用後は、土壌改良資材としてそのまま活用できる。
5 地質的な時間スパンでの循環資源「人工ゼオライト」
ゼオライト転換して有効利用し尽くした石炭灰の最終処理は、工業と農業の利用的組合せや融合を考えた物質の最適循環に組み込む処理法が適切と考えられます。この循環をうまく行わせるための処理管理体系の確立がこれから必要となるでしょう。最終のプロセスは、農地還元などの土への還元が適すると思われます。理由は、石炭は、太古の植物に起源を発するからです。つまり、植物は、生きていた大昔に、日光の力を借り水と二酸化炭素から光合成で生産した有機物のC−C結合間に太陽エネルギーを蓄えました。この時、当時の土壌からケイ素やアルミニウム等の無機養分を吸収して体内に取り込みました。この時の植物が、地質的変成作用で炭化したもの、が石炭です。このため石炭には、炭素の他、過去の土壌の無機成分を含んでいるのです。石炭を燃焼して、C−C結合を切りエネルギーを取り出した後に残った無機成分が、石炭灰となります。従って、石炭灰は、昔の土壌の成分ということになります。石炭灰の最終処分場所として土を選ぶことは、過去の土壌成分を現在の土壌に戻すことにほかなりません。遠い昔に失われた大切な成分を現在の土壌に返すことで、地球表層環境(土壌環境)の健全化および耕地の肥沃化に多大な寄与ができます。
参考文献
1)三島敦夫:“石炭灰の有効利用の現状と展望”、安全工学、30、18〜32(199)
2)逸見彰男:“石炭灰を原料とするゼオライト系土壌改良剤の製造法”、公開特許公報
特願 昭57−196178、公開 昭59−86687
3)逸見彰男:“フライアッシュを原料にするゼオライト系土壌改良資材の製造”、農業お
よび園芸、 62、43−44(1987)
4)T. Henmi, "
SYNTHESIS OF HYDROXY-SODALITE ("ZEOLITE") FROM WASTE COAL ASH",
Soil Sci. Plant Nutr., Vol.
33, 519-523 (1987)
5)逸見彰男, 成田美加 :石炭フライアッシュのゼオライト化、愛媛大農学部紀要、
第32巻、1−7 (1987)
6)T. Henmi : Increase in
Cation Exchange Capacity of Coal Fly Ash by Alkali
Treatment、Clay Science Vol. 6、277−282
(1987)
7)逸見彰男: (1987) 石炭灰廃棄物を原料にするゼオライトおよびその関連鉱物の合成、
日本土壌肥料学雑誌、 第58巻、150−152
(1987)
8)逸見彰男: 石炭クリンカーアッシュおよび製紙スラッジ焼却灰を原料 にしたゼオラ
イトの合成、愛媛大学農学部紀要、第33巻、143−149 (1989)
9)T. Henmi : IMPORTANCE
OF CHEMICAL COMPOSITION (SiO2/Al2O3 RATIO) AS FACTOR
AFFECTING PHYSICO-CHEMICAL
PROPERTIES OF ALLOPHANES FROM WEATHERED VOLCANIC
ASH AND PUMICE, 5th Meeting of
European Clay Groups (Ed. J.Konta), 459-464 (1985)
10)逸見彰男:アロフェンのケイバン比と性状および構造との関係, 粘土科学,
第27巻, 32-44 (1987)
11)逸見彰男:“石炭灰の人工ゼオライト転換とリサイクル”、ニューセラッミク、
Vol.10, No.7,p54−62(1997)
12)田村 、松枝直人、逸見彰男:“アルカリ処理によるゴミ焼却灰のゼオライト転換”、
日本土壌肥料学雑誌、第68巻、第4号、395−401(1997)
13)石炭灰ゼオライト化実証プラント、実証実験報告書(平成4年12月)、
クリーン・ジャパン・センター、(1992)
14) 逸見彰男、福山寿雄、村上 徹:アルカリ処理した石炭フライアッシュによる家畜
フンの脱臭、畜産の研究、45、750−752(1991)
15)逸見彰男、福山寿男、櫻井雄二:砂質土壌における芝生育に及ぼすゼオライト化し
た石炭灰の施用効果、日本土壌肥料学雑誌、第61巻、641−643 (1990)
16)逸見彰男:「環境対策シリーズ[1]:産業廃棄物のゼオライト転換による再資源化・
有効利用技術開発」、pp. 132-135、ニュー・テクノロジー&サイエンス(1994)
17)逸見彰男:廃棄石炭灰の再生資源化−ゼオライト化による石炭灰の有効利用−
化学と生物 Vol.29、No.12、768−770(1992)