環境植物生理学研究室は種々の環境ストレスがどのように作物の生体に影響を与えるかを植物生理学的視点から研究している。最近の研究としては,作物植物体を主に水耕栽培することにより栄養素の変動による塩ストレス,養分欠乏ストレスに関する研究および温州ミカン等の果樹における糖集積機構をマルチ栽培を応用しての土耕栽培による水ストレスに関する研究を栽培管理の面から応用的な研究として行っている。さらに,培養植物を用いて,高濃度の培地濃度条件下での養分富化による塩ストレス,低濃度培地での養分欠乏,高温培養条件下での高温ストレス,低温培養条件下の低温ストレス,培地へ生長調節物質および除草剤を添加しての生長阻害の誘導などによる環境ストレス条件下で水分状態計測と生長速度計測を行い,環境ストレスがいかなる場合であっても,伸長細胞内へ水が流入する速度が生長率を決定していることを明らかにし,生長に伴った水ポテンシャル勾配(Growth-induced Water Potential)が重要であることを提唱している。同様の考え方に基づき,現在果実の生長について研究していて,温州ミカン,水耕トマトの果実,そしてインゲンマメの莢及び種子の生長制御機構について研究している。計測法としては,サイクロメーターを主に使用し,水ポテンシャル,浸透ポテンシャル,膨圧を計測している。また,プレッシャーチャンバーを併用して,水ポテンシャル成分中のマトリックポテンシャルを計測し,さらに,アポプラスト溶液を抽出してアポプラストの浸透ポテンシャルを計測している。プレッシャープローブを細胞レベルで平行して使用することにより,サイクロメーター,プレッシャーチャンバーの計測値と比較することによって植物の組織及び細胞レベルで精度の高い水分状態計測を行っている(研究室ホームページ挿絵)。代謝産物の分析には高速液体クロマトグラフを使用している。
また,植物生理学的基礎研究としてプレッシャープローブを利用しての細胞計測,細胞内生体物質の超微量分析技術の開発としてレーザーイオン化飛行時間型質量分析計(MALDI TOF-MS)を用いての計測を行っており,いかに環境ストレスが細胞レベルで代謝機構に影響するかの機構解明を行う研究に重点を置いている。
さらに,レーザーイオン化試薬の開発に取り組んでおり,MALDI TOF-MSを3台,エレクトロスプレー型飛行時間型質量分析計を1台,エレクトロインパクト型四重極質量分析計を1台使って質量分析における分析法に関する基礎研究に取り組んでいる。
キャピラリー電気泳動装置 (Capillary
Electrophoresis)
プレッシャープローブ (Pressure Probe)
レーザーイオン化飛行時間型質量分析計 (MALDI TOF-MS)
(Matrix-Assisted
Laser Desorption/Ionization Time-Of-Flight Mass Spectrometer)
試料の作成 (Prof. Dr. Rosa Erra-Balsells is
preparing samples for MALDI TOF-MS.)
コンピューターによる分子計算 (MALDI matrix
simulation with HyperChem)
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