愛媛大学農学部食料生産 学科
蔬菜花卉学研究室
Laboratory of Vegetable & Flower

R5年度の実験内容

【水深の差の影響確認実験】
 図4のように、実験水田を三つの区画に分け、それぞれの水深が異なるように水田各区画の底面の高さを調整するようにした。各実験区の設定条件は表2のとおりである。
 水位は定期的に測定した。水位の推移は図5のとおりである。水位は天候に左右される(大雨の日や少雨が続く時期もあった)ので、常に設定水位が確保されていたわけではないが、測定期間全体を通じての各試験区の平均水位は表3のとおりである。

   

実験の様子

  

  

  

  

 

【水深管理について】
水深の影響を評価するため、各試験区からそれぞれ10株のイネのサンプルを採取し、それぞれの「穂数/株」、「籾数/m2」、「登熟歩合」、「1穂籾数」、「千粒重」、「収量」を調べて比較した(表4)。また、本実験水田の存在するあいな里山公園には、他にも通常栽培法(施肥・農薬使用)にて稲作を実施している水田があるため、比較区としてこの水田からも同様にサンプルを採取した。
 表4の結果を、通常栽培を除いて,A区,B区,C区だけでTurkeyの多重比較検定を行ったところ、危険率5%で「穂数/株」「籾数/m2」「登熟歩合」に水深による有意差が確認されたが,「1穂籾数」、「千粒重」、「収量」には有意差は確認されなかった。また、水深による影響が確認された「穂数/株」、「籾数/m2」、「登熟歩合」の試験区ごとの差は、通常区との差と較べると軽微なものであったことが分かる。特に、そもそも最も重要な指標はコメの収量であるが、収量については水深による影響が確認されなかった。さらに、収量については、通常栽培区の収量に対して試験区の平均収量が31%にとどまったことを鑑みると、粗放型管理を行う上で、水深の細かい管理はほとんど無意味であることが伺える。つまり,仮に稲作経験が無い市民が水深を管理する場合が生じた場合には、水深管理はある程度大雑把でも良いということになる。

【実験区の収量
 我が国の現代農法による稲作の収量は約0.6kg/㎡とされ、また、令和3年の我が国の水田の平均収量は0.535kg/㎡である。
 今回の実験区の収量は、我が国の平均収量と比較すると約40 %(0.213÷0.535)の収量に相当する。有機農法による収量は約0.2 kg/㎡とされるので、今回実験の収量はほぼ有機農法に相当する。

【稲作に要する労働量の考察】
 大人一人あたりが1年間に食するコメを栽培するのに必要な労働量を求めた。表6は、今回の実験に要した作業項目ごとの100㎡当たりの必要延べ日数である。

・一般に大人一人当たりのコメ(玄米量)の年間消費量は一般的に60 kgとされる。
・60 kgのコメを得るためには、3.17 aの水田が必要となる(60 kg÷0.189〔表5〕×100㎡)
・この面積の水田でR5年度実験と同じ農法を行うと、年間延べ15.7人・日の作業量 (3.17 a×4.95人・日〔表6〕)が必要となる。
・葉山町での実践者は、年間およそ20日間の労働を必要としていた。それと較べると、15.7人・日は、4.3日だけ少ないことになる。
・しかしながら、本実験で算定した作業には、苗代による苗つくりや脱穀・籾摺りなどの未計上の作業量がある。それらが仮に4.3日であるならば、ほぼ20日間の労働で必要なコメが採れたことになる。
・いずれにしろ、今回の実験では、無施肥・無農薬で素人が作業してもコメができることが確認できたことが大きな成果だった。

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