Bacillus属菌をはじめとした耐熱性芽胞形成菌(以下、芽胞菌)はほとんどの自然環境に生息しており、穀類、食肉製品、魚介類、牛乳、青果物等の食品原料の多くから検出されることから、加工食品の安全保持において耐熱性芽胞菌の制御が非常に重要視されています。これらの芽胞菌は100
℃程度の温度ではその多くが生残するため、低酸性高水分活性食品(pH 4.6・Aw 0.94以上)の常温流通には120 ℃・4分間以上のレトルト殺菌が食品衛生法において義務付けられています。しかしながら、レトルト殺菌により加工食品の無菌性を確保できる一方で、熱により食品の味、色調、匂い、栄養素の劣化が避けられません。非常に強い耐熱性を示す芽胞菌だが、増殖を行う際に耐性のある芽胞の形態から耐性の非常に弱い栄養細胞の形態に発芽することが知られており、栄養細胞は60
℃程度の温度でも死滅させることが可能となります。
近年、以下のように芽胞菌の発芽を高圧処理で誘導することが可能であると明らかにされました。そこで本研究室では、食品の熱劣化を最小限とする芽胞菌の殺菌手法の提案を最終目的とし、100
MPa近傍の高圧処理と熱処理を併用した芽胞菌の自滅的発芽誘導殺菌の研究を行っています。また、本研究は農研機構食品総合研究所・食品高圧技術ユニットと連携して、研究を遂行しています。

◎関連する卒業論文テーマ
・耐熱性を示す枯草菌芽胞の高圧処理による殺菌における乳酸塩が与える影響
・食品における枯草菌の高圧発芽誘導