愛媛大学農学部食料生産 学科
蔬菜花卉学研究室
Laboratory of Vegetable & Flower

都市近郊水田の市民参画による保全活用のための不耕起湛水栽培法の展開方策

【研究の概要】

1.都市農地の「宅地化すべきもの」から「都市にあるべきもの」への都市計画上の位置づけの変化や都市計画法の改正による「田園住居地域」の創設〔H28年〕、生産緑地法の改正〔H28年〕、都市農業振興基本法の制定〔H27年〕
2.都市農地の、相続に伴う宅地化の進展や、担い手不足による耕作放棄地の増加
3.我が国の農地の約半分を占める水田については、畑と較べて、今まで市民参画による稲作の研究がほとんど行われてこなかった。
4.一方で、営農者ではない市民によって粗放管理型の稲作(水田の不耕起湛水栽培)の実践例が生まれ始めている。

【不耕起湛水栽培とは】
1.水田での不耕起湛水栽培技術は、もともと我が国で提唱され、農業家の岩澤信夫によって1985年に確立された。しかし、この栽培技術は、従来の農法の代替農法として提唱されたものであり、市民参画を意図したものではなかった。
2.一方で、神奈川県葉山町の谷戸の水田(下写真)では、某芸術家が20年以上にわたってこの不耕起湛水栽培(冬季湛水・不耕起栽培)を実践している。稲刈り時以外は水田に常時水を張るという不耕起の稲作により、年間たった20日間の労働で、自らが1年間食す米の収穫を実現している。この方法は、図らずも単位労働時間あたり最大の収穫を実現しているという意味で画期的な取り組みである。
3.水を張る水田は雑草が生えにくく、本来は省力的な農業に適す性格を有するはずであるという思いがあったが、そんな中で不耕起湛水栽培に出会い、本栽培法を用いた市民参加の可能性を探るという着想を得た。

【神奈川県葉山町の棚田の事例】
苗代は同じ水田に設けて、通常よりも長い期間をかけて苗を育てる。そうすることにより、その場の環境に馴染む強靭な苗が育つのだという。作業は基本的に人力であり、脱穀も足踏み式のものが使われている。この実践者は地元の芸術家であり、農業は全くの素人だったにもかかわらず、放棄地だった棚田を、人から頼まれておよそ20年前から開墾して稲作を始めたという。素人だったため、農業の先入観がなく、そのために自由な発想で稲作に取り組め、年間およそ20日間の労働で、自らが食するコメを、無農薬・無施肥で生産できているとのこと。芸術家のため、自ら水田でネイティブアメリカンフルートを吹き、この水田でコンサートを開くこともある。

 

    苗代       脱穀機等(足踏み式)          コンサート風景

研究目的】
農家ではない都市住民では管理が難しいとされてきた水田を、逆に都市住民が農に親しむ場としてとらえ直し、都市住民でも参画できる低負荷の稲作労働を実現させるために、その手段として不耕起湛水栽培法を用いた粗放的管理の稲作の具体的手法の検討を本研究は目指し、もって様々な都市的課題を解決することを目的とした。

【実験内容】
科研費研究として、R5年からR7年まで実験を行った。実験フィールドは、神戸市北区にある国営公園である「あいな里山公園」である。

各年度の研究成果の詳細は下記をご覧ください。
令和5年度の研究成果
令和6年度の研究成果
令和7年度の研究成果(準備中)

【本研究の成果一覧】
1.不耕起湛水栽培による市民参加型の稲作試行実験
  加藤真司・平田富士男・札埜高志
  2023年度日本造園学会関東支部大会梗概集/事例・研究報告集第41号P55-56(査読なし)
     2023年12月10日に口頭発表を行った。
  (発表リスト)https://www.kanto.jila-zouen.org/ronbunpdf/2023.pdf
  (梗概集抜粋)2023年度日本造園学会関東支部大会梗概集抜粋スキャンデータ
 
2.農業経験のない市民による稲作の実現条件の把握(中間発表)~市民モニターによる実証実験報告~
  加藤真司・横田樹広・平田富士男・札埜高志
  第55回日本緑化工学会大会研究交流発表会(2024年9月13日)にてポスター発表を行った。
  第55回日本緑化工学会大会研究交流発表会要旨集P13(査読なし)
  (要旨集抜粋)第55回日本緑化工学会大会研究交流発表会要旨集抜粋スキャンデータ
  (ポスターPDF)第55回日本緑化工学会発表ポスターPDF
 
3.都市公園内に設けられた水田における稲作経験のない市民による粗放的水稲栽培実現の可能性
  札埜高志・平田富士男・加藤真司
  人間・植物関係学会雑誌.論文(事例研究)24(1):P1-8.2024.(査読あり)
  受理年月日:2024年12月21日
  (掲載論文)https://www.jsppr.jp/academic_journal/pdf/vol.24.no1_p1-8
 
4.粗放的管理による市民参加型稲作手法実現のための実証実験
  加藤真司・横田樹広・平田富士男・樋上啓子・札埜高志
  2025年度日本造園学会関東支部大会梗概集/事例・研究報告集第43号P106(査読なし)
  2025年12月6日にポスター発表を行った。
  (発表リスト)下記URLの8ページ目の冒頭  https://www.kanto.jila-zouen.org/ronbunpdf/2025.pdf
  (要旨集抜粋)2025年度日本造園学会関東支部大会梗概集抜粋スキャンデータ
  (ポスターPDF)2025年度日本造園学会関東支部大会ポスターPDF
 
5.都市近郊水田の有効活用に向けた市民参加型粗放稲作の成立条件
  札埜高志・加藤真司・平田富士男・樋上啓子・横田樹広
  人間・植物関係学会雑誌.論文(原著論文)査読有り
  令和8年4月6日受理 25巻2号に掲載予定
  (受理通知)受理通知
 
6 研究成果説明・意見交換会の開催
  本HPに掲載した研究成果について、関係者等への成果の発表および意見交換を行った。
  (メモ)研究成果の説明会・意見交換会の開催

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