
研究概要
物質生産を目指した光合成微生物およびC1微生物の解析
光合成微生物は、植物と同じように光エネルギーを利用して、水と二酸化炭素(CO2)から有機物を合成する能力をもった微生物のことを言います。また、C1微生物とは、メタン(CH4)やメタノール(CH3OH)など炭素数が1つの化合物(C1化合物)を唯一の炭素源として利用できる能力(メチロトロフィー)をもった微生物のことを言います。これらの微生物は、土壌や水圏、植物表面など私たちの身近に広く生息し、地球規模の炭素の循環に寄与しています。当研究室では、これらの微生物の能力を分子レベルで解析してその生態を理解し、将来の有用物質生産技術に利用することを目指しています。
私たちの活動は、産業活動においても、生命活動においても、高いエネルギーレベルの物質をエネルギーレベルの低い物質にまで分解する過程で生じるエネルギーを利用して成り立っています。また、自然世界の物質循環においては、有機物は好気条件下では二酸化炭素まで、嫌気条件下ではメタンガスまで分解されます。したがって、低いエネルギーレベルの二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスが地球表面に蓄積してしまい、地球温暖化問題となっているのです。
この問題を解決するためには、エネルギーレベルの低い物質を、エネルギーレベルの高い物質へと循環させる自然界の反応を促進する必要があります。それが、「光合成」であり、「メチロトロフィー」という微生物の能力なのです。このような能力をもつ微生物は、炭素数一つの化合物から無数の炭素からなる多糖、タンパク質、脂質などの生命活動に必要な高分子を合成することができます。また、微生物は非常に小さいため表面積が非常に大きく、高等植物に比べ光合成能が高いと言われています。「光合成」は光の当たらない暗所ではその能力を発揮できませんが、「メチロトロフィー」は光を利用せずとも無数に増殖してC1化合物からエネルギーレベルの高い物質を合成することができます。
当研究室では、「微生物による自然治癒力」を分子レベルで理解し産業的に効率よく利用することで、持続可能な物質生産技術の開発を目指しています。
最近の取り組み(2011年以降)
■学会発表○星野, 稗田, 堀田, 宇都宮, 阿野
:Acidomonas属酢酸菌のメタノール脱水素酵素群の酵素学的特徴と生理機能
:第75回日本生物工学会大会(2023.09.05 名古屋大学)
○稗田,堀田、宇都宮、阿野
:Acidomonas属酢酸菌に特有なランタノイドによるグリセロール生育抑制と機能未知PQQ酵素
:日本農芸化学会中四国支部第61回講演会(2022.01.22 高知大学・オンライン開催)
○堀田,宇都宮、阿野
:ランタノイドに応答したAcidomonas属酢酸菌の遺伝子発現調節
:日本農芸化学会中四国支部第56回講演会(2020.01.25 愛媛大学)
◯堀田, 宇都宮, 西江, 阿野
:Acidomonas属酢酸菌のレアアースによるグリセロール代謝の抑制
:第10回愛媛微生物学ネットワーク(NAME)フォーラム(2019.10.19 松山大学)
◯稗田, 宇都宮, 阿野
:Acidomonas属酢酸菌のレアアース応答における機能未知Pqq6の役割
:第10回愛媛微生物学ネットワーク(NAME)フォーラム(2019.10.19 松山大学)
○阿野
:【招待講演】 酢酸菌の植物との関わりとランタノイドへの応答
:おかやまバイオアクティブ研究会 第56回シンポジウム(2019.10.08 岡山理科大学)
○宇都宮,西江,堀田, 稗田,阿野
:Acidomonas属酢酸菌のレアアースによるグリセロール生育抑制
:第71回日本生物工学会大会(2019.09.16 岡山大学)
○宇都宮,稗田,西江,阿野
:Acidomonas属酢酸菌のレアアースが制御するエタノール酸化
:日本農芸化学会中四国支部第54回講演会(2019.06.01 岡山理科大学)
○西江、宇都宮、阿野
:Acidomonas属酢酸菌によるグリセロールの酸化変換
:第70回日本生物工学会大会(2018.09.07 関西大学)
○西江、宇都宮、阿野
:Acidomonas属酢酸菌のPQQ-アルコール脱水素酵素は、グリセロールをジヒドロキシアセトンに酸化する
:日本農芸化学会中四国支部第51回講演会(2018.06.16 山口大学)
○宇都宮、三井、阿野
:Acidomonas属酢酸菌のランタノイド依存性メタノール酸化系の役割
:日本農芸化学会2018年度大会(2018.03.17 名城大学)
◯宇都宮
:レアアース依存性メタノール脱水素酵素のもう一つの機能
:第8回愛媛微生物学ネットワーク(NAME)フォーラム(2017.10.28 愛媛大学)
◯三宅、齊宮、阿野 【ポスター賞】
:微細緑藻における油脂生産時の葉緑体分解
:第8回愛媛微生物学ネットワーク(NAME)フォーラム(2017.10.28 愛媛大学)
◯西江、三宅、阿野
:Acidomonas属酢酸菌のグリセロール酸化に寄与する酵素
:第8回愛媛微生物学ネットワーク(NAME)フォーラム(2017.10.28 愛媛大学)
◯宇都宮、阿野
:Acidomonas属酢酸菌のレアアース存在下で機能するエタノール酸化系の解析
:酢酸菌研究会第9回研究集会(2017.10.14 半田市市民交流センター市民交流プラザ)
◯三宅、齊宮、阿野
:微細緑藻における油脂生産時の葉緑体分解
:第69回日本生物工学会大会(2017.09.12 早稲田大学西早稲田キャンパス)
◯宇都宮、山本、三井、阿野
:Acidomonas属酢酸菌のレアアースに対する応答
:日本農芸化学会2017年度大会(2017.03.18 京都女子大学)
◯宇都宮、山本、阿野
:レアアースはAcidomonas属酢酸菌のADH発現を抑制する
:酢酸菌研究会第8回研究集会(2016.11.05 近畿大学和歌山キャンパス)
◯齊宮、三宅、阿野
:微細緑藻における油脂生産時の葉緑体分解機構の解析
:第7回愛媛微生物学ネットワーク(NAME)フォーラム(2016.10.29 松山大学)
◯宇都宮、山本、阿野 【ポスター賞】
:レアアースによるメチロトローフ酢酸菌の代謝制御
:第7回愛媛微生物学ネットワーク(NAME)フォーラム(2016.10.29 松山大学)
○三好、阿野
:希土類金属の酢酸菌エネルギー代謝への影響
:第6回愛媛微生物学ネットワーク(NAME)フォーラム (2015.10.24 松山大学)
○三宅、阿野
:微細緑藻における葉緑体減少と油脂生産の関係
:第6回愛媛微生物学ネットワーク(NAME)フォーラム (2015.10.24 松山大学)
◯山本、阿野、松下
:Acidomonas属酢酸菌のシトクロムc酸化酵素
:酢酸菌研究会第7回研究集会(2015.10.10 東京大学農学部)
○山本、藥師、松下、阿野
: Acidomonas methanolica がもつ B 型シトクロムcオキシダーゼの酵素学的特徴
:第56回日本生化学会中国四国支部例会(2015.5.29 島根大学)
◯阿野、山本、薬師、松下
:酢酸菌のB型ヘム・カッパーオキシダーゼの精製と特徴づけ
:日本生体エネルギー研究会第40回討論会(2014.12.12 愛媛大学)
◯山本、三井、薬師、松下、阿野
:α-プロテオバクテリアに見出したB型ヘム・カッパー末端酸化酵素の機能分析
:第87回日本生化学会大会(2014.10.18 国立京都国際会館)
○阿野、大久保、三井
:メチロトローフ酢酸菌Acidomonas methanolicaにおけるジヒドロキシアセトン生産
:日本農芸化学会2014年度大会(2014.03.28 明治大学)
◯幡田、阿野
:メチロトローフ酢酸菌Acidomonas methanolicaにおける炭素源に応答した
呼吸鎖電子伝達系の変換
:日本農芸化学会2013年度大会(2013.03.26 東北大学)
■学術論文
◯ Ito T, Sugimoto M, Toya Y, Ano Y, Kurano N, Soga T, Tomita M.
: Time-resolved metabolomics of a novel trebouxiophycean alga
using 13CO2 feeding.
: J. Biosci. Bioeng. 116(3) 408-415 (2013)
◯ Ito T, Tanaka M, Shinkawa H, Nakada T, Ano Y, Kurano N, Soga T, Tomita M.
: Metabolic and morphological changes of an oil accumulating trebouxiophycean alga in nitrogen-deficient conditions.
: Metabolomics 9(1) 178-187 (2013)
■研究助成
◯公益財団法人えひめ産業振興財団 平成27年度大学発起業化シーズ育成支援補助事業
:阿野嘉孝(代表)
:BDF製造過程で副生する廃グリセリンの処理・資源化技術の開発(平成27年度)
◯科学研究振興機構(JST)研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)探索タイプ
:阿野嘉孝(代表)
:メタノール資化性菌を利用した廃グリセリンの資源化技術の開発(平成23年度)