
研究概要
発酵という"生命現象"を化学し、微生物の能力を最大限に引き出す
発酵は,人類にとって有益な物質を生産する微生物の反応として理解されています。
人類は古くから、この発酵をくらしの中で上手に利用してきました。
私たちの食卓を飾る、お酒、味噌、醤油、漬物、お酢などは、いずれも発酵を利用して製造される伝統的な食品です。
しかし、これら発酵食品の製造に関わる酵母や乳酸菌、酢酸菌といった微生物は、人類のために物質を生産しているわけではありません。
食品の製造工程の中で、"彼ら"が「生きる」という目的のために、過酷な環境に応答して細胞内の反応を変化させ、生き抜いた結果に生じた物質です。
その微生物反応が人類にとって有益かどうか、"ヒトの視点"で定義されているのが発酵であり、腐敗との違いとなります。
けれども、発酵も腐敗も「その環境で生きるための微生物の営み」であり、微生物にとっては同じ目的の生命現象と言えます。
発酵を、"微生物の視点"から
"彼ら"が生産するアルコールや乳酸、酢酸は、いずれも殺菌、抗菌を示す化合物です。
"彼ら"にとっても有害ですが、その環境で生きるために生産しなくてはならない物質です。
そのため、"微生物の視点"で見ると、これらの物質を"効率よく生産する仕組み"や"生産した物質の毒性に耐える仕組み"を持つことが、その環境での生存を有利することとなります。
実際、近年のゲノム科学の解析から、発酵という生命現象には、単に物質を生産する仕組みだけでなく、生存を有利にする数々の卓越した仕組みが備わっていることが分かってきました。微生物の力 〜 温・故・"創"・新 〜
現代社会において、石油資源に頼らない低炭素社会を目指してバイオマスを中心とした新しい発酵技術(バイオプロセス)の開発が求められています。
そこでは、より効率的に物質を生産してくれる微生物が必要不可欠です。
そのためには、微生物の能力を単に利用するのではなく、発酵という生命現象を解析し、その仕組みを取り入れることで、その能力を最大限に引き出すことができると考えています。
当研究室では、古くから利用されてきた発酵に関わる微生物の力を新しい解析技術を取り入れて見直し、自然と共存できる未来のためのバイオプロセスを開発することを目指しています。
【愛媛大学農学部・農学研究科 教員紹介パンフレット】